部屋の先は、また螺旋階段。
のぼった先には、また踊り場。そして扉。
ゆっくりと開けたら、あたしは部屋の中へ吸い込まれた。
灯していた松明がかき消され、一面は真っ暗闇になっていた。
「愚かな冒険者よ」
「ガンジーの住処へようこそ」
「ここがお前の目にする最後の部屋だ」
「お前には何も見えぬだろう」
「わしらにはお前が見えるぞ」
部屋のあちらこちらから、高い声や低い声が入り交じって笑っている。
いきなり目の前が白く光ったと思ったら、おどろおどろしい顔だけの怨霊が、
あたしの方へ飛びかかってきた。
あたしは腰を抜かした。全身から力が――、魔力が吸われている。
魔法薬を出すために、荷物袋を引っくり返すと、あれこれが転がって出てきた。
「……その壷は何だ?」
ガンジー(の声の一つ)が出した口調に、聞き覚えがあった。
女性には櫛をあげた。魔法使いには金貨をあげた。って事は……。
「この塗り薬が欲しいの? この部屋を通してくれるなら、あげてもいいわよ」
あたしに訊かれて、声たちが言葉を返してきた。
「その魔法の膏薬は貴重だ」
「取引に応じよう」
そうしようそうしたい、と声たちが言うと、部屋の奥が淡く光り、戸口を照らした。
あたしは塗り薬の壷を持ったまま、戸口に近づいた。
扉を開けたら、後ろ手に壷を投げ込んで、脱出!
ぱたん、と閉めた扉の向こうで、ガンジー達の声が微かに聞こえた。
けど、(たぶん)実体のない彼らが、どーやってあの薬を使うのかな……?