星新一ショートショート
『天使考』新潮文庫、番号9、『ようこそ地球さん』収録。 壮大な話だ。ショートショートで終わるのがもったいない。長編作品、いっそシリーズものになってもおかしくない。例によってアイディア潰しが炸裂している。 舞台は、神様と天使が暮らす天国、という…
『たのしみ』新潮文庫、番号8、『ようこそ地球さん』収録。 近頃のネットで、「因習村」というモチーフが取り上げられているのを見かける。私の好きな、ミステリ系の作品でも常連のモチーフ。金田一耕助作品に始まり、『ひぐらし』然り『レイジングループ』…
『患者』新潮文庫、番号7、『ようこそ地球さん』収録。 例によって、落語のようなオチの付く話。誰しもプロフェッショナルである前に、泥臭い人間であるという真実。 前に読んだ『人類愛』のバリエーションとも言える。 ただ、『人類愛』では、遠い宇宙の彼…
『証人』新潮文庫、番号6、『ようこそ地球さん』収録。 途中までは本格ミステリだったはずの話が、脱線して遠くへ吹っ飛んでいく。 テーマになっているのが、掲載当時は最新メディアだっただろう、テレビの業界。激増する番組数に対し、現場の機材である録画…
『桃源郷』新潮文庫、番号5、『ようこそ地球さん』収録。異星人から物品が送りつけられる話、の逆パターンと言えよう。この話の地球人は、なかなか根性が座っている。新しい星、(名前は「パル」)を見つけたのはいいが、そこを自分たちが利用する資源としか捉…
『宇宙通信』新潮文庫、番号4、『ようこそ地球さん』収録。落語の一席のような、または寓話のような話である。扱われている題材は、星作品の基本のキ。宇宙人とのコンタクトを巡る顛末。ところで、ここで現実の歴史をおさらい。地球外知的生命体探査、いわゆ…
『弱点』新潮文庫、番号3、『ようこそ地球さん』収録。不気味な話である。地球に謎の物体がもたらされる回は少なくないが、今回はまるっきり原因不明。いきなり現れた物体に、救いの無いオチが付いて終わる。ところで、世には「SCP」というジャンルがある。…
『雨』新潮文庫、番号2、『ようこそ地球さん』収録。主に1970年代の環境問題は、温暖化と逆方向の、氷河期による干魃が筆頭だったと記憶している。ただ、原因がたとえ何であろうが、当座の人々における悩みはいつの時代も変わらない。食料不足だ。そんな「未…
(初稿がクラッシュしたため書き直しています)『デラックスな拳銃』新潮文庫、番号1、『ようこそ地球さん』収録。タイトル通り、『デラックスな金庫』のバリエーション。趣味が高じて財を投じて凝りまくった品を作った人の話。ただ、ベースになっているのがピ…
『最後の地球人』新潮文庫、番号50、『ボッコちゃん』収録。本作が書かれた当時は、日本を含め、地球の人口が大幅に増えていた時代だった。「人口爆発」というのは、20世紀後半によく使われるようになった語だ。ちなみに筒井康隆氏による『48億の妄想』は196…
『なぞの青年』新潮文庫、番号49、『ボッコちゃん』収録。この話は是非、途中まで読んだところで手を止めて、事の真相を予想してみてもらいたい。町の人々の素朴な願いを次々に叶えてみせる正体不明の人物。今まで『ボッコちゃん』の作品群を読んできた人な…
『冬来たりなば』新潮文庫、番号48、『ボッコちゃん』収録。「冬来たりなば、と言えば何と続く?」というクイズが今時は成り立つかもしれない。因みに正解は「春遠からじ」。さて本題。この度の話は、「宇宙人とのファーストコンタクト」タイプ。せっかく友…
『白い記憶』新潮文庫、番号47、『ボッコちゃん』収録。他作家のアイディア殺しとして定評のある星氏。SFやホラーなどは基本として、今回の話では、まさかのラブコメが披露される。この話はある程度ネタバレしないと語れないから、途中まであらすじを明かす…
『よごれた本』新潮文庫、番号46、『ボッコちゃん』収録。「人外召喚」の内、「悪魔」モチーフのパターン。星作品では非常に多い印象。人と悪魔と、互いに言葉尻を取り合う屁理屈合戦ぶりが、星作品の気質に合うのだろう。今回登場する悪魔は、他のショート…
『盗んだ書類』新潮文庫、番号45、『ボッコちゃん』収録。「博士のアヤシイ発明品シリーズ」と名づけたい。もう少し記事数が増えたら、こういうシリーズ名を各種揃えたい。さて、そんな今回の話に出てくる発明品は、薬と呼ばれているものの、実際のところは…
『欲望の城』新潮文庫、番号44、『ボッコちゃん』収録。多彩な星作品において、本作は純粋にホラー系。『世にも奇妙な物語』で映像化か、あるいはいっそ『笑ゥせぇるすまん』のコミカライズで見てみたい。本作が発表されたのは、大量生産&大量消費の時代だ…
『おみやげ』新潮文庫、番号43、『ボッコちゃん』収録。私の世代では、本作『おみやげ』と『繁栄の花』がある意味、双璧となる。小学校の国語の授業で必ず取り上げられている作品だったからだ。特に『おみやげ』は、「宇宙人」という設定さえ飲み込めれば、…
『特許の品』新潮文庫、番号42、『ボッコちゃん』収録。星作品の十八番。宇宙人との接触。物パターン。誰が考えた何かサッパリ分からんが、まあいいや読める設計図だから、とにかく作っちゃえ!という展開の早さには、笑えるやら恐ろしいやら。テンポが良い…
『愛用の時計』 新潮文庫、番号41、『ボッコちゃん』収録。 人は、往々にしてそれは男性は、日常生活に関わっている私物、無機物に強い思い入れを持つ事が多い。 それは車だったり、バイクだったり、カメラだったり、そして腕時計だったり。 スマホが普及し…
『程度の問題』新潮文庫、番号40、『ボッコちゃん』収録。 分かりにくいたとえになってしまうが、『かまいたちの夜2』の「わらび唄」と話の流れが似ている。少なくとも表面上は。あちらの話では、主人公は何度も何度も殺人事件の惨劇を体験したループ記憶に…
『意気投合』新潮文庫、番号39、『ボッコちゃん』収録。 そうはならんやろ!なっとるやろがい!……読み終わった時、そういうツッコミ入れたくなった。 星新一ショートショートの十八番、異星人とのファーストコンタクト。私たちの所に彼らが来る場合と、私た…
『診断』新潮文庫、番号38、『ボッコちゃん』収録。 今回はネタバレして感想を書く。 星作品では、精神疾患をテーマ、というより話のネタに使った作品がしばしば見受けられる。今まで紹介した『暑さ』もその一つだが、本作はそれと対照を成す内容である。 『…
『キツツキ計画』新潮文庫、番号37、『ボッコちゃん』収録。FLASHアニメとかで見たい。もっとハッキリ言えば、この話、『秘密結社鷹○爪』辺りでイメージされて仕方ない。皆でいっしょうけんめい、面白おかしい悪事を企ててがんばるけど、失敗して報われない…
『なぞめいた女』新潮文庫、番号36、『ボッコちゃん』収録。記憶という物には、客観的な証拠能力がない。今回のショートショートを端的に述べるとこうなる。その人の人生の記憶というのは、どこまで行っても自己申告でしか表せない。「私は記憶喪失です」と…
『被害』新潮文庫、番号35、『ボッコちゃん』収録。読み終わったと同時に思わず出た一言。「そんなんありか?」(←星作品では通常運転)つくづく思う。星作品の世界に、まともな訪問客はいない。『悲しむべきこと』『デラックスな金庫』『気前のいい家』のよう…
『肩の上の秘書』新潮文庫、番号34、『ボッコちゃん』収録。本作のタイトルにあるアイテムは、個人的にちょっと欲しいなと思ってしまう時がある。人々が連れ歩くオウム型ロボット。何と、自分が小声でつぶやいた言葉を聞き取り、礼儀正しく丁寧表現で言い直…
『プレゼント』新潮文庫、番号33、『ボッコちゃん』収録。宇宙から得体の知れない何かが降ってくる。星作品なら大抵、友好的(と思わせる)宇宙人。それが本作では、いわゆる王道、地球人を害する恐ろしい怪物だった。そこで本作の各国は、核戦争寸前の冷戦を…
『ある研究』新潮文庫、番号32、『ボッコちゃん』収録。ある種SFであり、ミステリでもある。星作品といえば、輝かしい未来が定番だ。家にはロボット、空の果てには宇宙人、不思議な発明品で謎現象。そういう出来事が日常茶飯事。そう思いながら、いつもの気…
『波状攻撃』新潮文庫、番号31、『ボッコちゃん』収録。今回はネタバレ前提で感想を書きたい。20世紀を超えてから、時代が星作品に追いついた。初読当時は、まさかこんな面倒くさい詐欺なんて仕掛けやしないだろうと思っていたが、恐らく今なら、こういう事…
『妖精』新潮文庫、番号30、『ボッコちゃん』収録。登場するのが、女の子と、そして妖精という、星作品としては変わった話。女性向けの媒体に載ったのかなと憶測する。ストーリーの流れは、悪魔の出てくる話に近い。悩みを抱えている人間の前に、超常存在が…