私たちが入ったのは、恐るべき場所だった。
闇の中、明かりで照らされて見えるものは、くすんだ灰色ただ一色のみ。
壁も、天井も、床も、コンクリートで固められた通路が、
縦横無尽に走っている。
「そういえば、聞いた事がありますよ。
山川耕造は、昔からのゲーム好きが高じて、
ファンタジー世界のような迷宮を密かに作ったとか。
その名も、誰が呼んだか『不思議のペンション』!」
私はそういうのは詳しくないが、迷宮を正しく言うなら
「ダンジョン( dungeon )」だろう。
ライトを握りしめて力説しているタカちゃんを余所に、
私は歩幅で距離を測りながら、壁に沿って移動を続けた。
見ると壁には、「Monster surprized you!」などと、
ふざけた文字まで見つかる。
タカちゃんは真に受けて怯えている。
辛抱強く探った結果、最奥部の部屋には金庫が据えられていた。
書斎で見つけた鍵で開くと、大量の借用書が見つかった。
八百屋の平田が借りた300万の証もある。
他には、「川村」という人物への借用書も目に付いた。