『リミット』
実は、この作品が『語咄し編』全巻を大人買いした直接のきっかけだった。
ネットの評判を読むに賛否両論、その一方でコミカライズなどの他メディアでは巡り会わず、長らく読みそびれたままだった。
実際に読んでみて、意見の割れる理由を理解した。
本来のハッピーエンディングである『祭囃し編』、つまるところ昭和58年6月を乗り越えても、運命の袋小路、即ち惨劇の連続からは逃れられないという顛末なのだ。
こんなパターンまであるとは驚いた。
原作読了後に読者が思い浮かべる展開は、
こうしたアンソロジーで書き尽くされているのではとも思う。
しかしながら、そういった殺人事件への流れは、断じて安直ではない。
原作の時点でも読者たちから問題視されていた、悟史の目覚めについて正面から真摯に取り組み、疑心暗鬼の生じる展開が比較的スムーズに納得できる形で描かれている。
個人的には、この話をそのままアニメで見てみたい気持ちもある。
自分本意でなく、大切な人を心から思うからこそ、その延長線上で罪を犯し、残酷に人を殺す人々の姿を。
ただしあくまでもバッドエンドの番外編としてだが。
彼らにはやはり、最終的には全員笑顔で幸せになっていてほしいと、私は心から願うから。
それでは。また次回。