好事家の世迷言。(続)

調べたがり屋の生存日記。gooブログから引っ越し中。

「蒼紅の冒険者」第71話「本気でバトル・時蛇編」

茂る葦(あし)の間を進んでいた時だった。
右の方から、シュウシュウという例の鳴き声が聞こえてきた。
その直後に飛びだしてきたのはモチロン、大蛇。
翼をもった巨大な紫の蛇が、目にも止まらぬ速さで飛び回っている。

「見るな!」

突然エッジが、ぼくの頭を手で下に押しやった。

「時蛇の魔力は甚大だ。一度魅入られたが最後だぞ」
「そうなの!?」

それならせめて、銀蛇の指輪だけでもつきつけてみようか。

「我は七大蛇の時蛇なり。我が主はマンパンでは変装しておられるだろう」

そんな台詞を言わせている間に、ぼくはもう一度呪文書を読み返していた。
何度も繰り返し、文字の癖を拾ってみる。

………………………………あ。

そうか! 変に難しく考えすぎてた!


「LIX――! 59番の項目を読め!(※反転させて下さい)


読み取った、禁呪とさえ言える語を、ぼくは時蛇に投げつけた。
それから顔を上げ、改めて時蛇の方を見た。
魔力を失った時蛇は、かろうじて空に浮いているだけの、単に大きな蛇になっていた。

ぼくは、すかさず戦輪(チャクラム)を放った。
空から落ちてくる蛇を、エッジの長剣が刺し貫く。
そこにぼくは、樫の杖を力一杯振り下ろす。
あわれ時蛇は、悲鳴を上げて消えていった。