『思い出の渚』
構造として、前回の『皆川由貴編』のバリエーションにして展開編。
前回は暴力団の抗争という要素が辛うじて「事件もの」たらしめていたが、今回は更に異色。
映画オーディションにおける脅迫事件、その中身は関係者の自作自演に過ぎないからだ。
やりようによっては、銃すら使わず解決できたのではと思われるほど。
それも当然、このエピソードの主眼は、 ゲストキャラの鹿島悦子、ひいては彼女の父・ 柴田洋一にある。
作者が前作『Cat's Eye』から続けている「父と娘」のモチーフを堪能するのが、このエピソードの醍醐味と言えよう。
なお、柴田には造形からも、作者の思い入れを感じ取れる。
連載当時も、離南島の某人に似てると言われたんじゃなかろうか。
そんな父娘を見守る立場に落ち着いている今回の獠&香の魅力も存分に描かれている。
香ファンなら、彼女が初めてロングヘアを披露した姿も見逃せない。
最後はギャグで落ちるが、『川田温子編』を思い出させる、しっとりとした終局も温かい。
こうして、二人の名コンビぶりが読者に印象づけられたのを機に、本編は再び王道へ戻る。 美女との三角関係のパターンへ。
それでは。また次回。