好事家の世迷言。(続)

調べたがり屋の生存日記。gooブログから引っ越し中。

「屍の先にあるもの」第24話「暗殺者レイチェル・1」

レイチェルは、海を越えた遙か遠く、東洋にあるハチマンの国で生まれ育った。
彼女は幼い頃から、国のために命を賭すべく、師匠からの厳しい訓練をこなし、
有能なアサシンに成長した。

しかし1年ほど前、師匠が突如消息を絶った事をきっかけに、
彼女の人生は大きく変わった。
今や彼は、国の主に裏切り者と断じられている。
だが、思えば失踪の前日、彼はレイチェルにだけ、奇妙な言葉を残していたのだ。

「オレは、選ばれたんだ」

身寄りのないレイチェルにとって、彼は父でもあり兄でもある、
心の拠り所のような存在だった。
だからレイチェルは、国を抜け出し、噂をたどって、
この死のワナの地下迷宮にまで行き着いたのだ。

レイチェルは、アニタの身を横たえると、彼女の荷物を調べた。
エメラルドやルビーやサファイア、パンや手鏡、
そして猿の形に骨を削ったお守りが入っていた。

レイチェルはパンを食べてから、北へ進んだ。