ねぇ……。あぎょうさん、って知ってる?
眠れない夜に、寝返りを打ってると、
どこからともなく、こんな声が聞こえてくるの。
か細いようで、それでいて、はっきりと響く声で。
「あぎょうさん、さぎょうご、いかに」。
最初は、気のせいだと思ってた。
だけど、次の夜になると、また聞こえてきたの。
前の夜より近いところから、前の夜より大きな声で。
「あぎょうさん、さぎょうご、いかに」。
それでもまだ、気のせいだと思ってた。思いこもうとしてた。
だけど、だけど。また昨夜も聞こえてきたの。
今度はとうとう耳元で、急かすような言いかたで。
「あぎょうさん、さぎょうご、いかに」。
もう、気のせいだなんて言えない。
だって、目を開けたときに、見ちゃったから。
暗闇の中から、蜘蛛みたいに沢山の、真っ赤に濡れた腕が、
私のことを捕まえようとしてるのを――――。
……なんて。
本日は、例によっての恒例行事。
今年の4/1は、昔からお気に入りのこの小話をお届け。
知ってる人は知ってるオチだと思いますが。
ネタバレは明日、コメント欄で行いますのでヨロシク。
それでは。また次回。