「危ないところだったな。ニック」
「うん……」
ぼくは、浮かんだ当然の疑問を口にした。
「どうして、おまえ知ってたんだ? 月蛇の弱点を」
「昨夜、シャドラク氏から聞いていたのだ。だが、キミに伝えるのを忘れていた。申し訳ない」
「ふうん……」
何となくスッキリしない気持ちのまま、時間は過ぎていく。
日が傾き始めた頃、ぼく達は馬車の集団に行き当たった。
アレがきっと、セントールさん達が言っていた、エルフのキャラバンだ。
「……何だね、お前さんは。ココは遊び場とは違うぞ」
近づくと、リーダー格に当たるのだろう大柄なエルフが訊いてきた。
ゼスターと名乗ったそのエルフに、ぼくは今の自分の望みを告げた。
「あの……ご飯ありません? お代は出しますから」
金貨の袋を見せて信用してもらってから、炊事用のテントに案内してもらった。
食事として出されたのは、パンと、あたたかい野菜のスープと、
ドロドロした感じのチーズと、薬草のお茶と。
見た目は変わってたけど、味は……体に良さそうでした。(嘘は言ってない)
食事の間もゼスターさん達は、ぼく達の様子をうががっている感じだった。
重苦しい雰囲気はどうも苦手だ。
食事の後、ぼくは自分の得意技(だと思う)、楽しいトークを振ってみた。
シャンカー鉱山でゴブリンを倒した下りを熱く語ると歓声が上がった。
……エルフって、ゴブリンの事が好きじゃないから、
こういう話だと盛り上がるんだよね。
気がつけば、ゼスターさん達の緊張はだいぶ解けているように見えた。
ぼくはタイミングを計って、次の目的をゼスターさんに告げた。
「ところで、ココってキャラバンなんですよね? 何か面白い物、売ってます?」