好事家の世迷言。(続)

調べたがり屋の生存日記。gooブログから引っ越し中。

「蒼紅の冒険者」第97話「魔王戦!」

扉を開けたら、やっぱり居た。めそめそ泣いてるファレン・ワイド。
さっきは慰めてあげたけど、もう優しくする理由はない。

「もう騙されないぞ。ファレン・ワイド。いや……マンパンの魔法使い!」

その瞬間、ファレン・ワイドの顔つきが変わった。

「なんと……・。まさかそこまで調べたとは。見上げたものよ。
 探し物の『諸王の冠』ならココにあるぞ。ほうびとして見せてやろう」

ファレン・ワイドは、黄金色の王冠を取り出して、机の上に置いた。
美しかった。簡単な作りの王冠なのに。本当にキレイだった。

そんな風に冠に目を奪われたのがマズかった。
ファレン・ワイドは、霧のような煙のような、黒い何かに変わりつつあった。
雄牛のようなその顔は、人間じゃない。冥府の魔王そのものだ。

「……あ………………あああッ!」

おぞましい瘴気に満ちていく中で、聞こえた悲鳴に顔を向けて、絶句した。
エッジが、くずおれている。頭を抱えて、震えている。

「エッジ!? 大丈夫か!? エッジ!?」
「う……あ……あああああ!!」

吼えて悶えるエッジに駆け寄り、その肩をつかもうとした。
だけど。つかもうとしたけど。つかめなかった。
見えているのに。触れない。
見えている?……いや、それも少し、透けて……?

激しく混乱するぼくに、魔王の言葉がトドメを差した。

「若造。我に戦いを挑んだ、その勇気は褒めてやろう。
 だが貴様の場合は、蛮勇というべきだ。
 まさかこの我に、たった一人で立ち向かおうとするとはな!」

たったひとり。
そうハッキリと言われたら、もう、認めるしかなかった。

ああ、そうだよ。ぼく自身、うすうす分かってたんだ。この旅の途中から。



――ぼくの幼なじみの姿が、ぼくにしか見えないんだっていう事は――。