ナオは道をまがりました。ドアがありました。なぐっても開きません。
(ナオ。その真ん中の、持ち手の所を叩きなさいな)
ナオは言われたとおりにしてみました。
ドアは内側から開かれました。
部屋にいたのは、角を生やした獣人の男性でした。
「何をしてるんだ、こんな所で? 道に迷ったのか?」
ナオは、こくこくと、うなずきました。
「こりゃ驚いた。そんな姿で言葉が分かるんだな。どう見てもお前は、
やたら大きい豹か何かにしか見えんが……そうか、ザラダンの魔物か」
獣人は独りで納得しているみたいでした。
「そうだ! お前にお願いがある。俺はハイドって言うんだが、
この手紙を、俺の妹に渡してほしいんだ。この、俺と同じ形の
メダルを持ってる。俺によく似た、とびきり可愛い妹なんだ。
なのに、どこにいるか行方が知れなくて、俺はもう、どうしたらいいのか……」
ナオに手紙を渡しながら、ハイドはぽろぽろ泣いていました。
きっと、とても大変で悲しい理由があるんだろうと、ナオは思いました。
「じゃあ、俺も旅を続ける。どうか頼むぞ。手紙は1通でいいか?
無くさないか? もし良かったら、いくらでも予備があるから」
大丈夫。ナオは、もう一度うなずきました。