「あんまり話したくなんだよな……この事件の事は」
「ふむ、世のプレイヤーの間でも賛否両論に割れている事件なのは確かだな」
「少なくともこのブログの筆者の中ではまだ、苦手意識が強いみたい。
被害者と犯人との関係に、どうにも共感できないって。
あと、尋問でのペナルティが多すぎじゃないかとか」
「そういった話は……深入りしない方が賢明と思われる。
何を語ろうとも、前提として大いに主観を伴う故に」
「じゃ、そういった話は置いといて。せっかくなら、楽しい方がいいからね。
ぼくとしては、サーカスの人たち全員が、
自分たちの仕事に一生懸命ってところは本当に良かったよ」
「誰もことごとく、プロフェッショナル魂を貫いていたな。
だからこそ、タチミサーカスは後々まで隆盛を誇れたのだ」
「殺人の仕掛けについても、最初はよく分からなかったんだけど……
有名な推理小説にあやかってるって後で知った時は驚いた」
「『逆転裁判』では、過去の推理小説のオマージュを含む事件も少なくない。
例えば【落とされる振り子】や【笑うライオン】もその一例だ。
そういった他作品を読んでいる事で、謎を解けてしまったという人も居られるだろう」
「ふうん……。あ、それじゃ、お前があの最後の場面で
全部解いたような顔で話してるのって、まさか」
「私の場合は純粋な推理だ。邪推をするでない。それよりも成歩堂、
この事件では、キミがやや情緒不安定な様子だったともメイから聞いたが」
「なかった」
「――――――」
「そんな事なかったよ。別に。何も。それでいいよね。……ね?」
「あ。ああ……それなら、まあ、構わんが……」
「って。こういう風に返すと、皆して黙るんだよな。何でだろ?」
(自覚はないのか、この男……)