その先の道は四辻になっていた。
そこに突然、呼びかけてくる声がした。
「こっちに来るんだ。正しい道はこっちだよ」
声の方向は真正面、北からのようだ。
レイチェルは声のする方へ歩き始めた。
道に沿って右に折れると、曲がり角に小柄な老人がいた。
長いヒゲを生やし、少し怯えたような顔で、前に大きな柳編みのカゴを置いて
しゃがんでいる。
天井から下がったロープが、そのカゴに結びつけられている。
「どうぞ、乱暴しないで下され。わしは何も悪いことはせん。
何か恵んで下されば、あんたを上に連れて行って差し上げよう。
上に行かない事には埒があかんよ」
レイチェルは食料を分け与え、カゴに入った。
老人は上を向いて叫んだ。
「アイビー! 引き上げろ!」
するすると上へカゴは動いた。
やけに速い。眼下の老人が、みるみる遠ざかっていく。
カゴは、天井の穴を通って上階に着いた。
その小部屋でレイチェルが見たのは、年を取った女トロルだった。
「あたしにも、何か寄越しな!」