好事家の世迷言。(続)

調べたがり屋の生存日記。gooブログから引っ越し中。

「屍の先にあるもの」第26話「暗殺者レイチェル・3」

その先の道は四辻になっていた。
そこに突然、呼びかけてくる声がした。

「こっちに来るんだ。正しい道はこっちだよ」

声の方向は真正面、北からのようだ。
レイチェルは声のする方へ歩き始めた。
道に沿って右に折れると、曲がり角に小柄な老人がいた。
長いヒゲを生やし、少し怯えたような顔で、前に大きな柳編みのカゴを置いて
しゃがんでいる。
天井から下がったロープが、そのカゴに結びつけられている。

「どうぞ、乱暴しないで下され。わしは何も悪いことはせん。
何か恵んで下されば、あんたを上に連れて行って差し上げよう。
上に行かない事には埒があかんよ」

レイチェルは食料を分け与え、カゴに入った。
老人は上を向いて叫んだ。

「アイビー! 引き上げろ!」

するすると上へカゴは動いた。
やけに速い。眼下の老人が、みるみる遠ざかっていく。
カゴは、天井の穴を通って上階に着いた。
その小部屋でレイチェルが見たのは、年を取った女トロルだった。

「あたしにも、何か寄越しな!」