好事家の世迷言。(続)

調べたがり屋の生存日記。gooブログから引っ越し中。

「暗黒都市へようこそ」第4話「囚われの女を助けだせ」

俺たちは、とにかくサラトガへの旅支度を急ごうと決めた。
ところが、宿に戻ると、俺宛に伝言が一つ。
エリュテイアが、レイボール広場で待っているという。
仲間たちは怪しいと反対したが――あいつは確かにそういうタイプだ――
俺は彼らに、すぐに戻ると謝ってから、広場へ足を向けた。

彼女は広場で、井戸の前に立っていた。
表情は固く、白い顔はいっそう白く、緊張している。
その出で立ちは紛れもなく、俺の知る彼女だった。だが、何かが違う。

「なあ、エリュテイア。他の奴は騙せても、俺はゴマカせねーぜ?」
「どういう事ですの、ヴァイス」
「俺の目は節穴じゃねーって事」

俺の言いたい事が伝わったのだろう、彼女の指が妖しく動く。
呪文の準備態勢だ。
俺も武器を抜こうと身構えた時、けれど別の殺気を感じ取った。
とっさに彼女に飛びつき、押し倒した。
一瞬遅れて、俺たちのそばに矢の群が降り注いだ。

「どうやら、俺たちをまとめて始末しようとしてる奴がいるな」

俺を殺せれば、彼女がどうなろうといいってわけだ。
彼女を抱き起こすと、不思議な物でも見たような顔で俺を見ていた。

「本物のエリュテイアは、わたくし達が捕らえてますわ。
返してほしければ、サラトガの『暗黒都市』へいらして下さい」

そう言ってから、俺の手を振りほどき、あっと言う間に走り去った。
残された俺は、手の平に目をやった。
弾みで引き千切ったのか、御印を象った首飾りがあった。