道行く人に尋ねつつ、紙マッチの店名であるスナック「PAL」に到着した。
カウンター席中心の、比較的シックな店だ。
常連らしい客で、既に席はほぼ埋まっている。
店の奥では、マスターが優雅な手つきで立ち居振る舞っている。
私はマスターに、山川耕造の写真を見せて聞き込みした。
「はい。この方なら先日お見えになっています……。ええっ、殺された?」
よく話を聞いてみると、山川耕造は事件の前日、
「川村」という人物と口論をしていたと言う。
「ええ。川村さんも常連で。遊び人風の印象です。
この写真の方――耕造さんでしたっけ――とは、
お互い住む世界が違うような感じで、
なのに一緒に飲んでたのが不思議で、それで覚えてるんです」
なるほど。では、川村にも話を聞きたいところだな。
「川村さんの居場所ですか?
そういった事はこちらも、お尋ねしませんからね。
近頃は、いらっしゃっていませんし……。
ああでも、恋夜さんなら知ってるかも。
彼女とも飲んでる事ありますからね」