星新一ショートショート
『追い越し』新潮文庫、番号29、『ボッコちゃん』収録。星新一氏は、世が世ならホラー作家にもなれたかもしれない。そんな空想さえ抱きそうになるのがこの話。前半は、よくある痴情のもつれ。男が女を弄び、女は男を恨んで自殺する。が、女はその直前、必ず…
『気前のいい家』新潮文庫、番号28、『ボッコちゃん』収録。ある種、今まで紹介してきたショートショートの集大成のような作品。強盗というモチーフは『悲しむべきこと』を思わせるし、被害者と加害者の奇妙な関係については『猫と鼠』を連想するし、終盤に…
『闇の瞳』新潮文庫、番号27、『ボッコちゃん』収録。色んな意味で、X-MENみたいな話。平凡の両親のもとに、非常識なまでに優れた超能力を宿した子供が生まれる。その少年は、光源の全く無い場所でも、前方どころか全方向を正確に「視る」事が出来る。本作の…
『ゆきとどいた生活』新潮文庫、番号26、『ボッコちゃん』収録。起床から出勤まで全てオートメーションで処理される未来社会での、テール氏の生活。(関係ないが、今回もまた変わった名前)星新一氏がSF作家として抜きん出た存在である事は明白だが、事によっ…
『人類愛』新潮文庫、番号25、『ボッコちゃん』収録。宇宙での遭難救助という壮大な設定から物語が始まり、何が何でも救おうという人間賛歌が強調されてから、いきなり終わる。ラストセンテンスで全てが決まる。一見、本格SFと思わせて、本質は落語に近い。…
『雄大な計画』新潮文庫、番号24、『ボッコちゃん』収録。タイトルを、より正確に言うなら、『雄大すぎた計画』となろう。ライバル企業に送り込まれたスパイ・三郎のお話。(何か普通の名前だ)遠大な目標を達成するために、作戦に時間をかける場合は、ままあ…
『マネー・エイジ』新潮文庫、番号23、『ボッコちゃん』収録。この度、ショートショート全話精読に挑んでいる自分は、星氏の予見が現在と異なっている事柄を幾つか見つけている。「日本の人口爆発」「百貨店の好景気」「喫煙の習慣」etc。本作『マネーエイジ…
『親善キッス』新潮文庫、番号22、『ボッコちゃん』収録。「キス」でなく「キッス」のところに時代性を感じる。星作品の十八番、遠い星とのファーストコンタクトもの。本作の異星人たちは、私たち地球人と限りなく似通っている。目立ったトラブルも起こらず…
『誘拐』新潮文庫、番号21、『ボッコちゃん』収録。発明家というのも星作品の一大モチーフかもしれない。新奇な品物というのは、それだけでSFのパーツとして機能する。で、そういう発明家は大抵、わるものに狙われてたりする。『変な薬』のように、発明品を…
『鏡』新潮文庫、番号20、『ボッコちゃん』収録。13日の金曜日に、合わせ鏡を覗けば悪魔に会える。どことなく信憑性をおぼえそうな、そんな迷信を主人公は実行し、捕らえた悪魔は、けれど弱く儚くみすぼらしい代物だった。潜在的にストレスを抱えていた男女…
『デラックスな金庫』新潮文庫、番号19、『ボッコちゃん』収録。ページ数がまた少ない。全3ページ。この作品は、「趣味となると人は盲目的に金を使い、後悔しない。」という作中の言葉が全てだ。趣味というのは本質として、自分の心だけを満たす非生産的かつ…
『冬の蝶』新潮文庫、番号18、『ボッコちゃん』収録。他作品の話で恐縮だが、ゲーム『クロノトリガー』での「未来」の町では、食べ物を「作る」という発想が消滅していた。食べ物は機械が「出してくれる」物であり、自分たちには何も出来ないと思い込んでい…
『ねらわれた星』新潮文庫、番号17、『ボッコちゃん』収録。ショートショートの極地。『約束』より短い。3ページに満たない。星氏は基本的に殺人とセックスを扱わなかったというのが通説だが、より正確には「露骨なエログロを書かなかった」であり、匂わせる…
『年賀の客』新潮文庫、番号16、『ボッコちゃん』収録。富豪の家を訪ねた客が、その富豪から、謎めいた因縁を突然打ち明けられる。その深刻な話しぶりから、てっきり客は、自分がその因縁の元凶なのだと思わされ震え上がる。こちら読者も、てっきりそう想定…
『悲しむべきこと』新潮文庫、番号15、『ボッコちゃん』収録。星新一ショートショート群には、クリスマスをモチーフにした作品も少なくない(はず)。将来的に、仕分けできたらお面白いかもしれない。で、そのクリスマスは、幸せな話とそうでない話とに分かれ…
『生活維持省』新潮文庫、番号14、『ボッコちゃん』収録。以前、似たモチーフの漫画やドラマが発表されて話題になった作品。逆に言えば、世にある物語の源流は星作品に行き着くという好例でもある。この話の世界には、私たちの世界にあるような不幸の大半が…
『不眠症』新潮文庫、番号13、『ボッコちゃん』収録。不眠症。難しく言えば睡眠障害。くたくたに疲れてるはずなのに、いざ寝床に入ると目が冴える。【眠いけれど眠れない】のが常人の悩み。つまり「眠い←→眠くない」だけの図式で済む。その悩みが、この話だ…
『猫と鼠』新潮文庫、番号12、『ボッコちゃん』収録。タイトルに偽りあり。オチまで全部読むと、そう思ってしまう。悪事を働いた人物がその弱みを握られて、定期的に金をゆすり取られる。推理ドラマ辺りでよく見るパターン。そんな、脅迫する者とされる者の…
『約束』新潮文庫、番号11、『ボッコちゃん』収録。全文引用しても画面が縦長にならないだろうと確信できる。ところで、私が星新一作品群を読み始めた時は小学生。本作を読んだのも、そんな頃だったと思う。当時は確か、何とも皮肉っぽい話だなあと感じた記…
『暑さ』新潮文庫、番号10、『ボッコちゃん』収録。「意味が分かると怖いコピペ」辺りと一脈通じる。もっと言えば、この星新一ショートショートこそ、そういった小話の源流に当たる。ストーリーを多く語ろうとすると、そのまま核心に至ってしまうため、感想…
『ツキ計画』新潮文庫、番号9、『ボッコちゃん』収録。バカSF!(←褒め言葉)この話は、勢いで一気に読んだ方がいい。内容の紹介=ネタバレにしかならない。プロットからして、冒頭と結末だけで成立する。その間のやり取りも面白いが、省いても支障ない。タイ…
『包囲』新潮文庫、番号8、『ボッコちゃん』収録。星新一氏は、アイディア潰しの異名を持つ作家だ。人によっては何百ページ分、何冊分に及ぶだろう作品の「核」だけを、膨大な数のショートショートにまとめ、消化している。この作品もそういったタイプの一つ…
『月の光』新潮文庫、番号7、『ボッコちゃん』収録。悩ましい作品だ。個人的な好みで言ったら、ベスト3には入る。と言いますか、全ショートショートで第2位かもしれない。(第1位は『処刑』)。とにかく文章が、滑らかで、自然で、美しい。完璧な環境にしつら…
『変な薬』新潮文庫、番号6、『ボッコちゃん』収録。薬というのも、星新一ショートショートではおなじみ。いつかモチーフごとで作品を分類できたら面白いかもしれない。登場人物の名前についても同様に、傾向がある。大抵は(『殺し屋ですのよ』のように)エヌ…
『来訪者』 新潮文庫、番号5、『ボッコちゃん』収録。 星新一作品の内、最も有名だろうモチーフ、宇宙人ネタの初登場。 正体不明の相手とのファーストコンタクトである。 初読当時に連想したのは、テレビでの、世界の秘境探検番組。 今になって連想するのは…
『殺し屋ですのよ』新潮文庫、番号4、『ボッコちゃん』収録。星新一ショートショートには、定番のモチーフが数多く登場する。悪魔、ロボット、宇宙人などなど。刑事事件も、そういったモチーフの一つだ。直接描写こそ無いものの、意外に人が死んでいる。この…
『おーい、でてこーい』新潮文庫、番号3、『ボッコちゃん』収録。振り返れば、コレの感想を書く事に、ためらいがあった。私の思う、この話のテーマは、ワンセンテンスで足りるからだ。目の前の問題を安易に先送りすると、手痛いしっぺ返しを食らう。一体全体…
『ボッコちゃん』新潮文庫、番号1、『ボッコちゃん』収録。2話目にして表題作品。星作品群に詳しくない方でも比較的知られている話だと思う。ン十年ぶりに、フラットな気持ちで再読したら、流石に時代を感じた事に少々驚いた。ロボットを作るくらいなら人を…
『悪魔』新潮文庫、番号1、『ボッコちゃん』収録。つらつらと、文字入力の練習用兼ねて試す計画。今までの「雑感」と違い、その場の勘で書き進め、最小限の推敲で、投稿を最優先。後日、PCで体裁を整える。この形式が軌道に乗ったら、他のテーマででも試した…
目標:スマホでの文字入力を、ガラケー&ポメラと同じレベルまで揃える。気負わずに毎日、進んで文章を書けるような話題。後から読み返しても、他の人が見ても楽しめる話題。それで思い立って。我が最愛の作家・星新一氏のショートショート(新潮文庫)をまとめ…