意外すぎる人たちがいた。
あの背格好。あの服。そして何より、超人的な視力を意味する大きな目。
アナランドの国境兵士だ!
「この中庭に入ってくるのを見ていたよ。
ココはお前みたいな余所者には危険な場所だ。
何ならアドバイスしてやってもいいぜ。料金は取るけどな」
三人の兵士たちが、ニヤニヤ笑いながら、そう話しかけてきた時。
エッジの剣が、三人ともを一気になぎ払った。
「エッジ!? 何を」
「騙されるなニック。真のアナランド兵士は、旅人から金など取らぬ!」
そ、それは確かにそうだけど……。
一方、吹っ飛ばされた兵士たちは、目を血走らせて起き上がってきた。
「な、何だ今のは!? 突風か!?」
「アヤシイ術つかいやがって! コイツも魔法使いだな!」
「もう小細工は要らん! あのババアみたいに潰しちまえ!」
――――間違いない。
ジャヴィンヌさんの言っていた「裏切り者」は、彼らだ。
卑怯な形で人を傷つける人だけは、許せない。
ぼくは、コレトゥスさんから祝福された堅木の杖を構えた。
その先しばらくの事は、詳しく話したくない。
倒した彼らの荷物を探ると、騙された旅人たちの持ち物が続々と出てきた。
砂や糊の入った小瓶、食料、緑の金属の指輪、それから金貨。
ぼく達は、それらを証拠品として持ち、ジャヴィンヌさんに報告した。
ジャヴィンヌさんは、閉じたまぶたから涙をこぼして言った。
「本当にありがとうよ。お礼にこのペンダントと聖水をあげよう。
それから、この先の用心も教えるよ。
ココのすぐ目の前にあるのは、『スローベン・ドア』だ。
合言葉を知らない限り、絶対に触っちゃいけない。
ヴァリーニャなら合言葉を知ってるが、
もしヴァリーニャに会うのなら、その前に粘液獣に会う羽目になる。
粘液獣には、くれぐれも近づかないようにするんだよ」