好事家の世迷言。(続)

調べたがり屋の生存日記。gooブログから引っ越し中。

星新一ショートショート再読。(その21)

『誘拐』
新潮文庫、番号21、『ボッコちゃん』収録。

発明家というのも星作品の一大モチーフかもしれない。
新奇な品物というのは、それだけでSFのパーツとして機能する。

で、そういう発明家は大抵、わるものに狙われてたりする。
『変な薬』のように、発明品を自分の身内だけで回してる(良心的?)というのは珍しいかもしれない。

で、この話に出てくる博士は、まさにマッドサイエンティストというか、いっそサイコパスというか。
家族思いの正義の味方、という第一印象からのドンデン返し。
最後の行を読んで、その意味を飲み込むまで少し時間のかかる読者は私だけじゃないと思う。
と言いますか、そんなにまでも精巧な外見のロボットを作れるなら、何もこんな破壊的な目的でなく、もっと何か他に使いようがあるんじゃないか。

ところで、この話の博士の名前が凄いインパクト。
エストレラ博士なんて他の話に出てきてるだろうか。

この名前のおかげで、読んだ事自体は忘れがたい。
が、確かに星氏が後に述べたように、肝心の内容が霞んでしまって覚えにくい弊害がある。
最終的な「エヌ氏」の名前が定着するのはいつになるかを、今の通読での楽しみにしておこう。

それでは。また次回。