好事家の世迷言。(続)

調べたがり屋の生存日記。gooブログから引っ越し中。

「蒼紅の冒険者」第70話「読めない呪文書」

ぼく達は、イルクララ湖の北岸にたどり着いた。
舟は岩陰の方へもやって、ヴィシュラミ湿原を歩いていく。
すると、誰かの話し声のような物が聞こえてきた。
ぼく達は、ひとまず近くの草むらに身を隠し、様子をうかがった。

数分後、現れたのは、興奮しているゴブリンの集団だった。
水かきが付いているから、より正確には沼ゴブリン。

彼らがフェネストラさんの言っていた相手かもしれない。
そう思ったぼくが草むらから出ると、沼ゴブリン達は驚いた顔でぼくを見た。
早口で何か言い合っているが、癖が強くて聞き取れない。

こういう時は、コレの出番だ。
ぼくはロルタグさんからもらっていた、緑のカツラを頭に載せた。

「RAP――!」

お互いの言葉を翻訳できる術によって、ぼくは彼らの話を聞いてまとめた。

沼ゴブリン達は今、空を飛ぶ大きな怖い蛇から逃げてきているところ。
でも蛇はとっても強い。
でもスナタの森の魔女から聖なる巻物をもらった。
でも巻物が難しいから必殺呪文なんて分かんないetc。

ぼくは自分が魔法使いだと説明して、その巻物を見せてもらった。

「…………うわ」
「それほど難しい言語で書かれているのか?」
「いや、言葉そのものは、ぼく達が普段つかってる物だと思うけど……」

達筆すぎて読めないって……実際にあるんだな、こういう事。
それで結局、巻物はもらえる事になった。
誰も読めない物なら、読めるかもしれない人が持ってる方がいいって言われて。
こうなったら沼ゴブリン達のためにも、頑張って解読しないとな……!